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「悠希(ゆき)、結果貼り出されてるって、見に行こーぜ」
親友の吉良隼人(きら はやと)に言われて、俺はうん、と返して学校カバンをしょった。
高校一年生最後の期末試験が終わり、今日は答案返却日だった。
「なぁー俺さ、またお前が学年でぴったり真ん中の順位だと思うんだけど、悠希はどう思うよ?」
隼人と並んで、学年の順位が貼り出されている掲示板へ急ぐ。俺は、少し眉をひそめて言い返す。
「毎回毎回失礼だな。俺だって好きでそんな順位とってるわけじゃないんだって」
「いやー、なかなかない才能だよな。ほんとすごい。尊敬の眼差し。…っておい!そんなむくれんなって!じょーだんだろ、じょーだん」
思わずむくれた俺の額を、隼人が軽く小突く。変な顔だな、と言って腹を抱える隼人の笑顔は、男の俺でも思わずかっこいいと思ってしまう。
隼人はモテる。そりゃあ身長も高くて顔も整ってて、おまけにバスケがうまかったら、モテないわけない。女の子との噂が絶えないのも無理はない。何もかもが平凡で、平均値のお手本みたいな俺と、いつも一緒にいるのがおかしいぐらいだ。
だけど、隼人はいつも隣にいる。小学校で出会ってから、中学も、高校もずっと同じだ。そしてこれからも一緒なんだろう。こんなに不釣り合いなのに、何故かそう安心して思うことができる。
「やめろって」
笑いながら隼人の小突き攻撃から逃れる。そうこうしているうちに、掲示板の前に辿り着いた。
「さぁーて、悠希は平均の呪いから抜け出せるのかな?」
「人の心配する前に、自分の心配しろよ」
掲示板の前は、結果を見る生徒達でごった返している。背のあまり高くない俺は人ごみに埋もれないように気をつけながら、隙間から自分の名前を探す。
俺らの学年の人数は145人。果たして……
「あ!悠希みっけ!!順位は………」
隼人は掲示板を指差し、そしてその瞬間に口を押さえてぶぶぶ、と吹き出した。
「73位wwwぴったりwww真ん中www」
「え、うそ!」
俺は案の定人ごみに埋れて、まだ自分の名前を探せないでいた。隼人に先に見つけられ、悔しくてまたむくれそうになる。
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