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 多映の運転する車は県境を越えた。国道は山道を下り、建物の多い町中に続いていた。コンビニエンスストアの看板を見つけた多映がそこで少し休憩する事を提案した。目的の場所まではまだあと一時間以上かかるようだ。もちろん侑子は同意した。コンビニエンスストアの駐車場に車を止め、多映はトイレに行くと車を降りた。  助手席で多映の後ろ姿を見送りながら、少し姿勢を崩し侑子は深く溜め息をついた。  多映の話では、連絡が途絶えたままだというメンバーが写真を撮影した場所に行った可能性があるのだと言う。しかし、その場所に向かっている理由はそれだけではない。 「実際にそこに行けば、あんたの霊感で何かわかるかも」  心霊写真からは何も感じ取ることのできないことに気付いたのか、多映はそう言った。明るくは振る舞っているが、恐らくは本当に次は自分の番だと不安に思っているのかも知れない。侑子の知る限りでの多映らしからぬ強引さがそう思わせた。  そんな多映に侑子はまだ本当の事を言えないままでいた。自分には、もう霊感なんてない。一緒にそこへ行ったところで何も分かるはずがない。
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