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壱
膝が震え、もう、立って歩くことも儘ならない。
暗闇の中を手探りで這って進み、おそらくは部屋の隅だと思える場所に辿り着くと、壁を背に両手で頭を抱えうずくまった。
──どうして、こんなことになってしまったのだろう。
大柴侑子(オオシバ ユウコ)は固く目を閉じ、乱れた呼吸を整えようと、深く息を吸いこむ。
喉の奥がヒリヒリと痛い。何度も悲鳴を上げたせいだ。
一度、大きく息を吐き出し、ずるりと鼻をすする。
興味本位にこんなところに来てはいけなかった。
後悔したところでどうしようもないことはわかっている。それでも侑子はそうせずにはいられなかった。
やはり、みんなを止めるべきだった。
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