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「あんた、トイレ行っとかなくて大丈夫なの?」  多映はコンビニエンスストアで何か買ってきたようで、白いビニール袋をブンブンと振り回しながら車に戻ってきた。 「うん、じゃあ、行ってくる」  運転席に乗り込んだ多映そう言って、侑子は助手席のドアを開けた。「あっ、飲み物だけはあんたのぶんも買っといたから」と、多映はコンビニ袋から紅茶のペットボトルを取り出すと、それを助手席側のドリンクホルダーに置く。  ありがとうと言ってから、侑子は車を降りた。車内ではエアコンが効いていたために気にはならなかったが、外はやはり暑い。車を降りる前に時間を確認すると午後四時を少し過ぎたところだった。まだ陽は高いところにある。目的地の心霊スポットには暗くなる前には着くはずだ。  どのタイミングで、自分に霊感がないことを多映に打ち明けようか──侑子は深く溜め息をついた。
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