2/7
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
 空腹を感じてサイドボードの時計を見ると12時を少し過ぎていた。そういえば朝から何も食べていない。何か食べるものはあっただろうか。読んでいた雑誌を閉じ、侑子はのそりと上体を起こした。  ベッドから立ち上がり冷蔵庫に向かおうとして、枕元に置いていた携帯電話の着信を知らせるLEDが点滅していることに気がついた。  昨日からマナーモードにしたままだったことを思い出す。  手に取った二つ折りの携帯電話を開き、ディスプレイに表記されている発信者名を確認すると、そこには宮川多映(ミヤガワ タエ)とあった。高校時代の友人だ。  通話キーを押し、受話部を耳にあてると「もしもーし」と明るく元気な声が聞こえた。侑子が地元を離れたせいもあって、高校卒業以来、二年以上疎遠になっていたが、間違いなく多映の声だ。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!