CASE2:ユウくんの場合

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今までずっと、いつも『新田さん』だったのに。 「梨央」 なんで、いきなり…… 「そんなに怖い? 俺のこと」 冷たい目で、口元だけ歪めて笑って。 冷たい壁に、押さえつけられた。 探してたって聞いたから、休憩時間に、こっちから探して。 青果の社員さんに、ここだって教えられた保冷庫の中。 初めて立ち入ったその場所は人気もなくて、声をかけながら奥に進むと、ユウくんは確かにそこにいた。 背を向けてしゃがみこんで……具合、悪いのかなって思って呼んだら 振り返った顔が、いつもより怖かったんだもの。 びくりと飛び跳ねるように反応してしまった。 それが、いけなかったのか……。 ふらりと立ち上がって寄ってきた彼に、後退りながら、すぐに手首を捉えられた。 長身の彼が、覆い被さるように顔を寄せて来て。 ……ち、近いっ! 慌てて顔を背けたら、 「梨央」 からの、そのセリフだ。 怖いよ…… いつもとは、違う意味で。
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