第1章

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激しくなり、保健室等は常に満員の状態になる。  怪我を負う児童も増加し、クラス編成は 教職員ともに輸血が迅速に行えるように 血液型での統一編成に移行された。  既に平静など一切が疑わしい。悪魔が潜んでる。 そういう噂から、猜疑心が全体に拡がる。 イジメ問題も燻り始めるし、魔女狩り的に警戒し合う。  だが。 「廊下を走るとどうなるのか?」  あらゆるトラップが起動し、走った対象の廊下は 重装甲シャッターで隔離され、擬似密室で捕獲する。 それをクリアされた場合は、走って移動する対象への 警戒アタックが開始される。  催涙系のもので、走っていない児童が巻き込まれる。 「廊下走破警告」が鳴り響いて赤い点滅ランプが 回転してから、数秒以内に児童全員が一時、教室へ 隔離され、担当の教師が校内捜査官の指示に従い IDをチェックされる。  それでも、廊下を走る者は後を絶えない。 もはや、犯行自体を何も行っていなくても 廊下走破を成功させたいだけの、愉快犯まで出てくる始末。  もはや、教育委員会も警察も政府も、何もかも泥沼状態。 終らないイタチごっこになりつつあり、海外の報道は これを逆に平和ボケとまで呼ぶ有様。本末転倒も甚だしい。  ん、あれ? クルリと見回す、誰も居ない長い廊下。  あ、暑いんでボンヤリしてた。 私、廊下を走ったから、廊下に立たされてたんだっけ。 聴こえていたのは窓の外の蝉時雨。 山の上に入道雲。蜉蝣が立つ一本道の彼方。  この非常用ボタンを押したい。 押して走って逃げたい悪魔がまだいる。  夏休みは一瞬だから。
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