第1章

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 螺旋階段が上にも下にも続いている。 真ん中に支えになる巨大な円柱があって 遠くから見れるとしたら捲き付く蛇か龍。  実際には朝顔の蔓のようで、葉が一段の 階段になっているという印象だ。  階段に囲いはない。一歩踏み外せば まるで真っ暗で見えない、遥か地上まで 逆さまに墜落して逝くように感じる。  同時に上を見上げるが、明るいものの 遥か上空まで続いて、霞んで見えない。  いわばこの螺旋階段は一種の塔のように 巨大な柱のように、ただ存在している。  階段は階段としてのみ意味があって 移動できるビルやタワーなどの 室内のあるような建造物は無い。  ここが屋内か屋外かと訊かれれば 屋外だと思うと答える。 太陽は見えないが、この明るさは日光に近いし 下のほうには雲があるように見える。  でも風に揺られる事もなく。 息苦しくも無い、雲より高くてもだ。 遥か下の地上は見えない程だから この中心の円柱だけが一本で建っている。  まるで御柱という印象だが、材質は解らない。 階段からでも、触れるがツルツルするだけだ。 コンクリートとも思うし、木材とも思える。 白いのだが、塗装されたものかも判別できない。  問題は階段のステップだ。  こちらはアクリルのような印象で 一段がかなり丈夫でありながら 安定していて、柔軟だ。  昇り疲れて座って休むのにも 最も適したソファーのようであり 歩く時は、足元に不安を感じない頑丈さである。 だが、さっきも言ったがアクリルのような 『透明な階段』なのだ。  円柱に捲き付いているので、 ここが何階であるかは不明であるが 上も下も、階段だけが透けて見えるのだ。  そして。  私の階段から見て、円柱を4周程した その下に1人の人物がいる。 私とほぼ同じ格好をしている。  格好といえば、私は白いシャツに 白いパンツと白いスニーカーだけだ。 アクセサリーもないし、財布もない。 入院患者の精密検査に着用するような。  そして真下にいる人物も同じ格好をしている。 と、思う。  想像でしかないのは、その人物に気付いた時 何度かコンタクトを試みた。  その人物らしきモノは、私が一段昇れば 同じく一段昇るが、一段降りれば、一段降りる。 声を掛けても返事は無く、アクリルから透かして 覗きこめば、その人物のようなモノも やはり下の方を覗き込んでいる。  つまり全く私と同じ動作をしてる。
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