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屋上。
パックジュースを飲みながら、並んで喋っているいちじく、いちか。
「本気で使おうだなんて思ってないわよ、ち
ょっとイライラしてただけ」
「ホントに?」
「ホント」
「いちかね、前は言わなかったけど、
お姉ちゃんと別々に住むようになってから、
いちか、結構荒れちゃって」
「……知ってるわよ」
パックジュースを片手にグラウンドを見下ろすいちか。
体育の授業風景が見える。
いちかの後方で、パックジュースを手にしたいちじくが立っている。
「ねぇお姉ちゃん、例えばここから飛び降りたら
楽になれるのかも、って考えたりしたことない?」
「楽になる前に死ぬほど痛いと思うけど」
「死にたい」
「いちか、あんた」
「でも死ぬのは怖い……」
「何言ってんの?」
「意味不明、だよね……。そうだよね。いちかも自分で意味不明。いちかのほうこそ気が狂っちゃってるのかも知れない。でも、そうなっても仕方ないくらいのことをしちゃった」
「……」
「親友がいたの。過去形。いた。でも今はいないの。嫌われちゃった。当然よね、付き合ってるって知ってて、その子の彼と寝たんだもん。自分のこと汚いって思うけど、毎日毎日そのことばっかり考えて、パッといなくなったらどんなに楽だろうって」
「あんた、それ、いつ?」
「この子のことも、こんないちかが守っていける自信はないのに」
いちか、自分のお腹を強く押さえる。
「罰なのよ、これは罰」
「じゃ、じゃあその罰を受け止めて生きていきなさいよ」
「そう、これからも強く生きていくために、消してもらえないかな? お姉ちゃんの力で。いちかのために使ってよ」
「いちか」
「親友のことも彼のことも憎い。新しい命のことなんて何にも知らない。でも一番憎いのはいちか自身なの。このままじゃ本当にこの子を連れてどこかから飛び降りちゃうかも知れない。助けて、お願い」
夕木が、陰から二人の様子を見ている。
「あんたは罰と言ったけど、お腹の子に何の罪もないし、罰を受けることもないわ」
「そうよ、力を貸して」
「……」
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