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「これは警告。絶対に力を使わないで。いい? わかった?」
「あんた、お腹にいる子がどうとかって……」
「そんなもん、いるわけないじゃない、こんなぺっちゃんこのお腹に
」
「ふざけないで。命、バカにしないで」
いちじく、腹を押さえながら屋上から去る。
夕木は、その後を追おうとするが……。
「一人にしてあげたらどうですか?」
「でも……」
「あんまり趣味よくないですよ。隙間から女の子の会話を盗み聞きなんて」
「ごめん」
「お姉ちゃんのことが好きなんですね。どうしてですか? いちかにはわからない。
ねぇ、どうしてなんです?」
「君には関係ないし、好きに理由なんていらないよ」
「でも嫌いに理由はあるじゃないですか。いちかたち、普通の人間じゃないですよ」
夕木、応えずに屋上を去る。
病院。
花瓶の水を替えるいちじく。
ベッドではかりんが虚ろな表情。
「お母さん、アタシね……全然あの頃と変わってない……」
※
真白葉家。
柊の棺に突っ伏して泣くかりん。十歳のいちじくがそっとかりんの頭を撫でる。
「ママ、泣かないで。アタシね、すごい力があるのよ。内緒だったんだけどね」
柊の遺影が黙って二人を見ている。
「これでママを救えるわ」
いちじくの手の平がオレンジの光を帯びる。
陰からその様子を見ている9歳のいちか。
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