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体育の授業中。
ナイフを持った友哉と、田向井が対峙している。
生徒たちがそれぞれに様子を見ている。
腰を抜かしていた女子生徒が、
友人に手を引かれて二人から距離をとる。
「お前のせいで、お前のせいで……」
ナイフを持つ手が震えている。
「おい、三上。やめろ……」
「お前なんか……殺してやる」
「お、落ち着くんだ。三上、あ、あれか? レギュラーのことか?」
「ああ、そうさ。お前のせいさ。俺の三年間、一体何だったんだ」
「三上、お前の気持ちはわかる。だがな、俺の判断は……。
あ、後で話そう。部活のときに、な」
「俺はもう部活には行けない。一体どんな顔して後輩たちに会えばいい?」
「わかった。わかったからまず落ち着け」
「俺の努力が足りなかったのか? そうなのか?」
「いや、お前は努力してた。だから俺も悩んだ」
「許さない」
松葉杖を急がせるいちじく、後ろから夕木に腕を掴まれる。
「ま、真白葉さん、どこ行くのっ!?」
「離して。あんたには関係ない」
いちじくは、夕木の手を振り払う。
※
真白葉柚子が、五歳のいちじくの手をとっている。
何かを願うように。
※
田向井を睨む友哉。
いちじくが、二人の間に割って入った。
友哉と向き合って……。
「真白葉?」
まず田向井が驚いた声を上げるが
いちじくはそれを無視。
友哉を見てこう言う。
「寒いの? 手が震えてるわ」
「何?」
「今は夏だけど」
「誰だ、お前」
怒りの矛先をいちじくにも向ける友哉。
「先生が憎い? それとも、たった三年間のために、その後の人生を棒に振ろうとしている自分が情けなくて恐いの?」
「黙れ! 関係ないやつは引っ込んでろ!」
「ダサいモブキャラそのままの台詞よね。いいわ、その憎しみ、アタシが消してあげる。きれいさっぱり」
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