1

7/10
前へ
/23ページ
次へ
職員室。 田向井の席に呼ばれているいちじく。 「真白葉、昨日はすまなかった」 「どうして先生が謝るんです?」 「真白葉を危険な目に遭わせた。先生の責任だ」 「あの先輩の責任ですよ」 「俺の監督不足だった。まさかあいつがあんなこと」 「誰かの感情なんて、誰にも管理監督できませんから」 いちじく、踵を返して去ろうとする。 「一応、事を大きくするつもりはないんだ」 「アタシも何も言わないです。興味ないですから」 「悪かったな」 「先生は、あの先輩の憎しみが、いつかは癒されると思いますか?」 「え?」 「……いえ、何でもないです。失礼します」 いちじくは、職員室を後にする。 オレンジ色の光が窓から差し込む。 帰り支度のいちじく。 夕木が近付く。 「真白葉さん、よかったら一緒に帰らない?」 「あんた、マジでちょっとヤバイ系?」 「え?」 「普通はふられたら気まずくなんない?」 「な、なんかほっとけなくて」 「アタシはあんたが好きじゃない。今までも今もこれからもずっと」 そこに突然、いちかが割って入ってきて、 いちじくの席に直行する。 妹に手を引かれたいちじくは 強引に教室の外へ連れ出された。 「ちょっと付き合って」   廊下で並んで歩くふたり。 「しつこいのがもう一人いたわけか」 「心配なのよ、お姉ちゃんが」 「お父さん、元気?」 「話を逸らさないで」 「じゃあ心配しないで」 「どうして!? お姉ちゃんまで」 「お母さんみたいに壊れちゃったらどうしようって?」 「そっ、そうだよ」 「何、飲む?」 急激に話を逸らすいちじく。 廊下に設置された自動販売機。 「え?」 「おごったげる。あんたとこんなに喋るのおばあちゃんのお葬式以来だし。その記念」 「な、なんなのよ、いちかは本気で」 「何飲む?」 いちじくは、自販機に硬貨を入れた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加