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職員室。
田向井の席に呼ばれているいちじく。
「真白葉、昨日はすまなかった」
「どうして先生が謝るんです?」
「真白葉を危険な目に遭わせた。先生の責任だ」
「あの先輩の責任ですよ」
「俺の監督不足だった。まさかあいつがあんなこと」
「誰かの感情なんて、誰にも管理監督できませんから」
いちじく、踵を返して去ろうとする。
「一応、事を大きくするつもりはないんだ」
「アタシも何も言わないです。興味ないですから」
「悪かったな」
「先生は、あの先輩の憎しみが、いつかは癒されると思いますか?」
「え?」
「……いえ、何でもないです。失礼します」
いちじくは、職員室を後にする。
オレンジ色の光が窓から差し込む。
帰り支度のいちじく。
夕木が近付く。
「真白葉さん、よかったら一緒に帰らない?」
「あんた、マジでちょっとヤバイ系?」
「え?」
「普通はふられたら気まずくなんない?」
「な、なんかほっとけなくて」
「アタシはあんたが好きじゃない。今までも今もこれからもずっと」
そこに突然、いちかが割って入ってきて、
いちじくの席に直行する。
妹に手を引かれたいちじくは
強引に教室の外へ連れ出された。
「ちょっと付き合って」
廊下で並んで歩くふたり。
「しつこいのがもう一人いたわけか」
「心配なのよ、お姉ちゃんが」
「お父さん、元気?」
「話を逸らさないで」
「じゃあ心配しないで」
「どうして!? お姉ちゃんまで」
「お母さんみたいに壊れちゃったらどうしようって?」
「そっ、そうだよ」
「何、飲む?」
急激に話を逸らすいちじく。
廊下に設置された自動販売機。
「え?」
「おごったげる。あんたとこんなに喋るのおばあちゃんのお葬式以来だし。その記念」
「な、なんなのよ、いちかは本気で」
「何飲む?」
いちじくは、自販機に硬貨を入れた。
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