第1章

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 バッグパッカーを自称して、滅多に帰国しない友人から 珍しくエアメールが届いていた。 はてさて、今度はどこをうろついているのやら。  当たり前だが、彼も俺もお互いのメールが 解らないわけでなし。SNSでもtwitterでも 気軽に連絡できるのだが。面倒くさがりなのだ、お互いに。  たまには、こんな国際郵便を手にするのも 旅行気分をお裾分けしてもらってるようであり 中々に気分がいい。明日、明後日は連休だし 本人はいないが呑みながら読むのが礼儀というものだ。 居間に入って缶ビールを開けながら早速に封をきる。  が、中身が無い。  ペラペラで貼り付いてるというわけでもない。 うっかり者のアイツらしい失敗に、苦笑してしまった。 よく道を間違えるし、忘れ物はする。 そんなんで、よくバッグパッカーなんて出来るもんだ。 逆に、便りの無いのは元気な証と思った。 間抜けっぷり健在と思えば、無事で何よりだ。  風筒を見れば、フランスからのようだ。 いいね。高貴なご身分なこって。 バッグパッカーじゃ、贅沢はできないか。 部屋で暖かくなって、冷えたビールを呑むほうが高貴かな。  あっちの冬は厳しいのかな。南北でも違うだろうけど。 住所をみるとモンフェルメイユのようだ。 パリから対して遠くないイメージだが、よくは知らない。 雨以外は日本とそれほど違わないのだろうか?  まぁ、筆不精が手紙を風筒だけでも寄越したのは 頑張った……方じゃないか……疲れがでた……のだろう。  その夜、私は旧友とモンフェルメイユを歩く夢を見た。 『レ・ミゼラブル』で、ジャン・ヴァルジャンが 暗い夜の森へ水を汲みにきた、幼きコゼットに 出会う町だ。俺は。行った事もないけど。  次の日は昼頃まで寝ていた。起きて居間へ行くと 覚えが無い程、ビールの空き缶が机にある。 こんなに呑んだっけなぁ。頭を掻きながら 洗面所へ行き、郵便受けを覗いてみる。  またエアメールが入ってる。  昨日、受け取って封をあけたはずなんだが? とりあえず、エアメールを手に取る。 封はきっていないが、やはりフランスからだ。 モンフェルメイユと書かれている。  変な夢でも見たのだろうか。単なる呑み過ぎかな。 そう思って、居間に戻っったのだが、ビールの空き缶に テーブルから落ちそうになって、エアメールが 崖っぷちにいる。昨日受け取ったものだ。封は空いてる。
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