第1章

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 俺は今朝、届いた二通目のエアメールを、不審に思いながら 封をきったが、やっぱり中身は空っぽだった。 わけがわからない。どういうつもりだ。 いくら忘れっぽいアイツだって、連続でこんなミスはしないだろう。 どういうイタズラなのだろう。  昨日の風筒と一緒にデスクに置いて、 その日の内に買い物や雑用を片付けて うっかりバッグパッカーのアイツをよく知る 別な友人へ気になったので電話を入れた。  友人の方へは何も来ていないらしい。 またどっかほっつき歩いてんのか!と 俺の話に驚いていた程だ。 念のためにアイツの実家へ連絡しようかと思ったが 確認も取らずに、ご家族を不安にさせたくなかったので アイツの彼女へメールしてみた。  やはり先々週から出発しているらしい。 暇があれば、というよりも無理にでも暇を作って しょっちゅう出かけているので、 メールには随分と愚痴も書かれていたけれど。  別に出会い系サイトで知り合った女性と わざわざフランスくんだりして 会いにいくわけじゃあるまいに。  とにかく本人による、エアメールではあったと思える。 届かない郵便事故はあっても、中身だけ抜き取るなんて無いだろう。  もやもやしたままの休日になってしまったが 新しく買って来たビールが冷えた頃には 特に気にせず、呑みながらも明日こそ有意義に過ごそう。 そんな事をぼんやり、思っていた。  性懲りも無く、起きたのは昼過ぎだった。 何か妙に体がだるい。軽く頭痛もする。 そしてテーブルは、絶対にこんなに呑んでいない!と 断言できる空き缶があった。それどころか ワインまで空っぽになっている。あり得ない。  まるで、誰かがやってきて、宴会でもしたような……。  俺は急いで顔も洗わずに、玄関へ向い郵便を確認した。 広告だのなんだのに混ざって、エアメールはあった。 フランスからだ。すぐさま居間に戻って開封した。  やはり、中身は空っぽだった。  そこで一昨日、昨日、今日の消印を確認する。 予測が当たっていれば、銀行振込は支えない。 郵便局へ行って、小切手を買う。 『ああ無情』ってことだ。 多分、クレジットも携帯も紛失したのだろう。 「全て失くした。」  それが空っぽの風筒の示す意味だ。 メールがあるつもりの【エア・メール】か。 くだらないにも程がある。 つまりはあいつは「?」より短い手紙を寄越したって事だ。
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