第1章

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 さて、話を始める前に断っておきたい事が1つだけある。 今回もしつこいようだが、猫の話である。 何の事だかサッパリ解せぬ。という人は、 そのまま何も気にせずに。  ブラインドから奇麗なラインにデスクを照らす陽射しで 俺のオフィスの雑然とした、埃臭さが浮き立つ。 バーボンの空き瓶。書類と写真というペーパー。 そして、大量の請求書の山。  バーボンとは元々、フランスのブルボン朝に由来する。 最初に作ったのは牧師だともいう。 だから俺はこの神聖な酒を、愚弄するように呑む。  つまりは仕事が上手くはかどらない場合。 この4つの薔薇が描かれた酒は、最高のアイデアを 引き出す事がある。(最善の結果に繋がるとは限らないが。)  で、前置きはお終いだ。俺は探偵である。 探偵が難事件を解決したり、天才的頭脳で密室を見破ったり そういう事は基本業務として、請け負っていない事は 一般常識のある皆様はご存知だと思っている。  主に、浮気調査とか不倫調査とか行方不明捜索などを 生業としているのだが、俺は特に行方不明における エキスパートである。 そこで、事前に断っておいたと思うが俺が得意とするのは 行方不明の『猫探し』である。人は俺をこう呼ぶ。  ディテクティヴ・オブ・ネコ。 (報酬、割引サービス中!夏季限定価格!)  ネコだけ英語ではない事に突っ込んではいけない。 世の中には素人が深入りしない方がいい世界もある。  ついでに紹介しておこう。俺の相棒は手足だけが純白で 全く捜査に嘘偽りない、後は全身真っ黒な(腹の中も) 4歳の♂ネコ。名前は【オプ】である。 簡単に紹介すると毛並みを逆撫ですると、異常なほどに 怒る。彼を怒らせたら、もうどんな難事件も解決はできない。  諸君も気をつけて欲しい。  自己紹介がてらに、本日の仕事を説明しておこう。 灰色&白のアメリカン・ショートヘアー(3歳)の 【マロンちゃん】の捜索である。栗色でも何でもない。  俺は最も自分に相応しく、好きな仕事を選んで 命がけでネコを探す毎日だ。 猫が好きなのか、探偵が好きなのかについての 質問は遠慮して欲しい。記念写真もサインもだ。 俺の仕事は常に守秘義務に基づく原則がある。  ちなみに、浮気調査はやっていない。 人間の♂♀がどうなろうと興味は無い。 俺のような天才が関わる事柄ではない。 っていうか勝手に別れろリア充。
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