第1章

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現代でいう、東京都文京区にある護国寺の境内や 湯島天神の境内で、見世物小屋にかけて 少しでも借金返済に充てた。  骨の髄までしゃぶるってのも、生きる為に必死と同じ。  雄牛のように、諸々の結縛を断ち切って、象が蔦葛を踏み敷くように 諸々の束縛を踏み砕いて、僕は、胎内へとふたたび 近づき行くことはない。天よしかして。 もし望むなら雨を降らせよ。と。  そうこうして、ついには1779年。 僕が日本に来て51年経った。思えば遠くに来たもんだ。 経緯は様々だったけど、中野の宝仙寺に17両で売られた。 300両から随分と、ディスカウントされたもんです。  それでも、明治、大正には結構、みなさん遊びに来てくれました。 さもあらん、泡沫の夢の如く。1945年にご存知の通り 東京大空襲で、全ては焼けて灰。  の、はずだったのですが、寺が燃えても 象牙だけは真っ黒になりながらも、残ったのです。 現在、再建された宝仙寺では完全に見学も取材も出来ません。  ここは真っ暗なのです。 あの、青い空を見て、静かな森に眠りたいけれど。 極楽浄土は遠く。遠く。 空は蒼く蒼く。  全てが暗いと、その闇の中心にいる気持ちになりますか? 僕はどこまでも響くように、パオーンと泣いた。
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