第1章

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先日より逃走中の灰色&白のアメリカン・ショートヘアー(3歳)の 【マロンちゃん】の捜索である。ちなみに栗色でも何でもない。  そこで俺の相棒の聞き込み調査では、前回、目撃されたという 児童公園の木陰で張り込みをした。  たしかこの辺を縄張りにしているのは茶マダラの野良猫(巨大)で 顔に大きな向こう傷を持つ、天下無双の親分。ジュリエット♀6歳。 飼い猫が、うろちょろして安全な場所ではない。  俺の相棒はミルクを猫皿に入れて、便所の裏から 目撃地点に仕掛けたミルクを見張った。退屈だ。眠い。  その瞬間、オッサンは駆け出した。【ジュリエット】だ! って、うおおいぃ!そいつは【マロンちゃん】じゃねえよ! 俺は【マロンちゃん】の写真を咥えて、間抜けな相棒に見せた。 意味が判っていないような顔だが伝わっただろうか?  とにかくここら辺で【ジュリエット】と揉めてもらっては 俺が大変困る。あ、いや、無論、捜査がスムーズに進まないからだ! からだ!  ご希望とあれば、もう一度釘をさすのもやぶさかではない。 からだ!  というか、飽きた。少々匂うが仕事故に仕方が無い。 便所の屋根の上で、休憩しよう。 下を覗きこむと、オッサンが見張ってる。 【ジュリエット】は構わずにミルクを飲んでいる。 何をやっているのだろうか。  俺達、猫には人間ごときでは解らぬ 何かがヒゲが触れる事もある。 だからといって、騒ぐほどの事ではない。  飽きたから少し寝ようと思ったとき、ヒゲが張った。 背後から灰色と白のアメショが側に寄ってきた。 赤の首輪が似合っている。全く警戒していない。 俺も美女、いや美猫といえども、ハードボイルド。 こちらから話しかけるような野暮じゃニャい。  彼女は【マロン】と名乗った。 俺は知っていると答えた。 『私を探しているの?』 「ああ、仕事だからな。」 『あなた達が作った迷子猫のポスターみたの。』 「俺じゃない、あいつだ。驚くほど似てないよな。」 『絵心は上手さ下手さじゃないってミカちゃんが言ってた。』 「依頼主の名前だな。飼い主か?」 『うん。』 俺の飼い主はオッサンだ。名前も知らねえ。探偵助手ってだけだ。 『変なコンビだね。』 「おかしいか?」 『おかしくないよ。』 「凸凹コンビだ。笑えよ。」 『笑えないよ。あんなに真剣で。』 「じゃあ見つけていいのか。」 【マロン】は毛づくろいをしてから続けた。
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