第1章

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再現性が混在する夢。挙げればキリがありませんが 目が覚めれば仰るとおり、ああ夢かと安堵はするのです。』 「そこまでは構わないと。」 『ですが、物理的に怪我をしていない。誰も傷つけていない。 財産を失っていない。そういった現実がありながら、同時に 映画やドラマを見た感覚と違って、実体験した印象があり 恐怖や絶望そのものは、体験した事実のように錯覚して 心の中に残ってしまうのです。』 「夢の中の体験が、トラウマのように残るという感じですか?」 『心が何かは知りませんが、苦痛が辛いのです。 夢で見た恐怖を、また別の夢で見たような奇妙と思える、 そんな気がする事もあります。』 「解りました。やはり私が貴方を研究室へお通ししたのは 間違っていませんでした。」 『私自身も必ず、α博士ならばご活用頂けると考えて来ました。』 「ご自身でも述べていたように、夢は数秒しか見ていないとか たかが夢の話だから。という【納得を得たい】目的ではないので 具体的な説明は避けましょう。但し何らかの副作用や後遺症が 出るかもしれない。そういった責任や研究データの機密保持など 一切についてを承諾可能であれば、こちらにサインの拇印を。」  私は何の躊躇もなくサインに同意した。α博士は続けた。 「さて、貴方の問題を回避する手段は2つあります。 まず、夢自体はいままで通り睡眠にあわせて心的体験をしますが 起きたと同時に、必ず忘れてしまう薬です。便宜上この薬を 《ホワイト》と名付けましょう。本来、夢にはエピソードは 構成されていないので、目覚めをキッカケにして 意識で再構成する働きを、阻止する薬だと考えて下さい。 ですから可能性のある副作用は、現実の記憶が再構成できなくなる という夢遊状態が、起こりやすくなるかもしれません。」 『すると、車の運転だけでなく、危険に繋がる行為への注意 詰りは私自身も、信号から電車待ち等の注意などを含めて、 日常の記憶を安定させる為に、記録をつける事で対処できますか?』 「それも、ハッキリとは解りません。記録で残した事自体を 再構成できずに、メモを破棄してしまう可能性もあります。」 『かなり不便に感じますが。』 「効果時間は10分程度と短いものです。 なので、眠る前に服用せず起きた直後に飲んで下さい。 気になるなら10分程は行動しないで済むように、 これからは普段よりも、10分早く目覚まし時計を
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