第1章

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セットするとよいでしょう。」 『つまり一度は、良い夢の喪失感、悪夢のトラウマは 心的に体験するけれど、その後、解体する訳ですね。 それは、多く耳にする起きて洗面所へ行ったり 着替えている内に、どんな夢だったか忘れた。 という話に似ている気がしますが。』 「似ているというより、そのままです。貴方の場合ですが 夢が実生活において精神的な、疲弊をおよぼしておる状態で しかも、むやみにそのダメージだけが持続している。 つまり傷は負うわけですが、早い治療をもたらす薬となります。」 『その10分間は、白昼夢のようですね。 《ホワイト》という気がします。』  α博士は最後の言葉には興味が無かったようで、 次に黒いカプセルの薬を、出してきた。 「もう1つの回避方法がこちら《ブラック》です。 《ホワイト》と違う点は睡眠の前に服用する事。」 『どのような作用が働くのでしょうか。』 「名前通り《ブラック》です。起きた時にはそれしか感じません。 貴方は自宅が暗い状態に恐怖を感じますか?無論、誰かが 隠れている気配もないし、通常の帰宅と同じです。」 『いえ、特には。』 「そういう状態に目覚めさせるのが《ブラック》です。」 『つまり、こちらも夢を見ないのでは無くて 夢を上書きするような感じでしょうか?』 「まぁ、仕組みは知らない方が、より良い効果を得るでしょう。 先ほどサインして頂いたので、この点に関してはお答え出来ません。 それでも構わなければ《ホワイト》で改善がなかった場合にのみ 《ブラック》を服用してください。これは厳守です。」 『解りました。α博士、ありがとうございます。 私はこちらに泊り込んで、検査と結果をご判断されるのかと 思っていたのですが、帰宅しても構わないのですか?』 「構いません。再来週の同じ時間にこちらへ来て下さい。 《ホワイト》のみを服用されても、《ブラック》を 服用されてもです。それではまた再来週に来て下さい。」  私はα博士に深く礼を述べて、研究所を後にした。  自宅へ帰ってYシャツを脱ぐと、いつもより汗ばんでいた。 その夜も奇妙な夢をみた、子供達が校庭で野球か何かしているのを 青空の下で、気持ちよく眺めているような夢だった。  だが、学校の校舎屋上から血塗れの。  目が覚めた。どの子供達も助けられなかったし、 私自身もかなり苦痛を味わった。  夢は夢。  所詮、たかが夢。
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