第1章

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 どう思うおうとも、実際に起きていない事を言い聞かせても いまみたと思い込んでいる映像が焼きついて離れない。 世界のどこかで今じゃなくても、同じような事があれば同じなのか。  汗びっしょりの首筋を拭こうと思って、ベッド横のテーブルに 《ホワイト》があった。即座に飲んで。10分間我慢した。  眠ったわけでもない。前後の繋がりが解らなくなってきた。 これは。シーツだ。シーツは、通り抜けられない。 枕は私の頭にくっついているが、どのような関係があるのだろう。 パジャマが砕けていく。天井がブロックのように、ゆらりゆらり 落ちてくる。何も、かもが、バラ、バラ、だ。  水を。  何があったのだろう?水を飲んだ。そうだ、夢だ。 今日は夢は見なかったのだろうか?見たような気もする。 見なかったような気もする。野球をしたような。 無意味だ。嬉しくも悲しくもない。  これが《ホワイト》の威力なのだろうか?  素晴らしいと思う。悪夢だったのか、楽しい夢だったか、 それは判らないし知ったところで夢は夢だ。所詮は夢だ。  次の日も帰宅してYシャツを脱ぐと汗が多かった。 《ホワイト》と水を用意して起きなくてもすぐ飲めるように 支度しておく。そんな日々が始まった。汗は増えていった。  それからは列車の荷台にガムテープで縛り付けられたまま 私を探し回って車内を右往左往する、膝から下だけの裸足の 部分人間の夢も、どんな予想外の展開であろうとも、容易く 《ホワイト》がぶち壊してくれた。欠かせない。  静かに森の中で眩しくなくて、柔らかくて優しい陽射しで フカフカの巨石がちょうど、リクライニングしたソファー。 否、それ以上に心地よく私は身を横たえて。 仮にここを離れても、またココへはいつでもやって来れるし 会いたい人と話したい事を話しながら、食事をする。  私がやってきた努力は、必ずしも無駄ではなくなった。 及ばずながら、誰かへ貢献できている。それは最愛の恋人や かけがえのない友人、多くの人々のおかげであり感謝の念で 嬉しくて笑いながら涙が。  目が覚めた。誰もいない。ここはココだ。もうあの森には 二度と行くことは出来ないし、誰もいないわけじゃないけれど 私に手を差し伸べてくれる人だって、都合と人生がある。 その全てを奪う事が出来るわけがない。  夢は夢。  所詮、たかが夢。  《ホワイト》の力が一週間目で弱くなった。
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