第1章

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汗で風呂上りのまま、体を拭かずに寝たのかと思った。 慣れてしまったのだろうか。再構成されたりはしないが 印象的な断片だけ、キルトの一片のように憶えている。 その前後が不明なので、余計に不愉快で、余計に悔しい。  それでも二週目の三日間は《ホワイト》で 夢を壊した。断片でも構成されるよりマシだと 思い込んでみた。でも、結局は印象だけが塵のように 積もって、貯まって、私は前と同じように 起こってもいない出来事で、自傷しながら眠っていた。  もう眠りたくない。  α博士を再訪するまで、残り僅かだったが結局 少し不気味な気がする《ブラック》を服用して寝た。  目が覚めた。のか?まだ眠っていない気がしたが カーテンをあければ朝だったし、日付も変わっていた。  これは、これこそが希望していた最高の夢破壊の 救世主なのでないか。私は長年これをこそ。 ずっとこの清々しさを待ち焦がれて。  清々しさ?いや。眠った感覚がないからスッキリはしない。 だが、それも構わない。副作用だと思えばいい。 とにかく悪夢も良夢もなくなった。黒い闇へ消えたのだ。 素晴らしい発明だ。やはりα博士は世界的な天才科学者だ。 この喜びを何と伝えよう。明後日が待ち遠しい。 近い将来、α博士は栄光と賞賛で学会へ再臨して、 私のような、苦悩を持つ人々から  もはや、夢など所詮は夢と、堂々宣言してくれるだろう。 付け焼刃のまやかしや、いい加減な誤魔化しではなく。 科学的な力でもって、人類の敵である夢を粉砕したと。 なんと喜ばしい朝なのだ。これこそ夢じゃないのだ!  その夜も《ブラック》を服用して寝た。 アルコールも必要ない。精神安定剤もいらない。アロマオイルも ヒーリングミュージックも、何もいらない。闇に包まれて眠る。  ブラック。  目が覚めた。のか?まだ眠っていない気がしたが カーテンをあければ朝だったし、日付も変わっていた。 明日は休日だ。α博士にこの何も憶えていない心地よさを どんな表現で伝えればよいだろう?  ワクワクする、胸が高鳴る。でも。何も憶えていない。 眠った気もしない。そのせいか、疲れが安らいでいない気がする。 何故か二日程、徹夜したような違和感がある。 だが、時計やカレンダーは一目瞭然で確実に私は睡眠をとっている。  はずだ。  確かに眠っていても内臓器官は動いているし、運動はなくても
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