第1章

3/4
前へ
/4ページ
次へ
バラックが増築して商店住宅化して、階段以外は迷宮みたい。 唯一駅がある商業区最下層から、昇って昇って。  海から陽が昇る中央あたりに『陽海学園』がある。  夏休みになると、レイジ先輩に会うチャンスは一切無い。 って気がする。エスカレーターって言っても、私だって受験生。 部活も何も構っていられない。……。のだけど。 新聞部をやめれない。「地下旧都市のせい。」って書くだけの 退屈な新聞なのに。レイジ先輩は自分のカメラを買うって言ってた。  この街にはデジカメはない。フィルムやレンズを高額で買うしかない。 それどころか、電話もない。携帯もない。全て郵便局、飛脚屋さん、 最も主要なのが【伝書鳩屋さん。】この街での緊急連絡はこれしかない。  ITなんてカケラもない!多分、それは地下旧都市のせいだと思う。  ただ、私が小学校まで通っていた、ピアノの先生が仰っていた。 「聞こえるかより、聴き取れるか。そういう耳を磨いて 楽器だけじゃないし、音楽だけじゃないんだよ。 何もかも聴いてご覧。香乃ちゃんが中心じゃない。 中心なんて、どこにもない。この星も、海に浮かぶ太陽も 全て中心じゃない。そういう風に聴いてご覧。 あんまり大きな話ではないの、仔猫を抱くような鳴き声。」  わかんない。私はピアノは下手だったし。今は先生の レッスンもお休みしてる。誰にも色々あるのだから。 音楽も先生も大好きだったけど、私の聴きたいのは  あの声。  夏休みに入って、結局はレイジ先輩に会えなかったけど。 写真屋さんがレイジ先輩が、カメラを買ったって言ってた。 やっぱり、写真やってるんだ。何を撮ってるのだろう。  きっと凄い写真とか、可愛い写真とか、色々なんだ。 地下旧都市みたいな、写真なんだっておもってた。  その数日後、駅前にポッカリ穴が空いた。 空が真っ青な、入道雲が遠い昼頃に知った。 落盤して、街を囲む階段が更に、地下へ通じてるって 普通は大騒ぎになるのだろうけど。この街に限っては。 「地下旧都市のせいだからねえ。」 「地下旧都市じゃあ、しょうがねえな!今日は特売だよ!」  一般的すぎるにも程がある。 私も、ポッカリ穴を見に言った。驚いた事に穴の周りは カラーコーン(よく工事現場にある赤い三角のアレ。)。 そんだけで、お巡りさんさえ見張ってない。 誰も無視してるか、話題にしても井戸端会議みたいに 「地下旧都市がねえ(笑)」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加