第1章

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 彼がこっちを見てる?違う、夕日を見てるんだ。 ヘッドフォンをしたままで。  その彼の横に、羽の生えた水色のボールが浮いてる。  清水陽太(シミズ・ヨウタ)と初めて出逢った日は これしか会話しなかった。名前を知ったのは少し後。  そして放課後の屋上で、次に彼に会ってする質問が 同じ日の夜に自分の部屋で、ボールを見て気がついた。  一箇所だけ穴が空いてた。何だろう?  ボールみたいで玉子みたい。生き物みたいなくせに どこか機械っぽい。机を跳ね上げた時もそうだった。  急に引っ掛かるように彼のヘッドフォンを思い出した。 自分のスマホ用のイヤホンを、差してみた。 カチリ。  ぴったりだけど、何も聴こえない。 そう思ったら、まるで拒否されるように プイッと、ジャックを吐き出された。 「あ、ごめん。……これじゃないんだ。」  違うヘッドホンかもしれない。探なくちゃダメなのかも。 その声を聴く為に。その言葉を知る為に。接続するために。 これは限界を越える為に、誰にでも起こる必須の事。 なんでもない普通の出来事。  つまりコネクト。
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