第1章

2/10
前へ
/10ページ
次へ
 リクラッカ王立円形劇場。客席の笑い声も、俳優も誰もいない野外劇場。 リクラッカ城のバルコニー風の謁見台から、舞台を見ることが出来る。 頑強な扉は堅く閉ざされている。扉には花火のような紋様が描かれている。  ミクトランの消息はようとして知れず。国王陛下は厳戒態勢を発令し、 通常軍部だけでなく、国立軍特殊部隊【ReSOCOM】も全面投入された。 (リクラッカ・スペシャル・オペレーションズ・コマンド) 軍事警察、及び市民警察が街のあらゆる警備にあたった。 国民に対しては夜間の外出は、一切禁止されたのだが効果は薄かった。  既に死神ミクトラン手配写真に意味は無かったからだ。 死神の骨を吸いあげた「炎と不幸ショロトル」が、闇夜に乗じて 人間の肉と骨をそのまま、食らうようになった。  警察も軍も既にミクトランの手口とは違い、殺人ではなく 捕食が目的になっている事は、気がついていたが国民がパニックになり 暴徒化する事を恐れた。これも計算の内か。捜索は常に後手一方だった。     さて古い古い話をしよう。あくまでもこの世界に伝わる話だ。  そもそも超古代、最初の太陽を支配した「邪神、テスカトリポカ」の 庇護の下、冥界を思うがままにした「死神、ミクトラン」と先ほど 名前が出た「炎と不幸、ショロトル」は真逆の神であった。 「ショロトル」とは、古代における太陽再生の為に行われていた、 生贄の儀式を嫌って廃止させつつ、現在でも偉大なる太陽神として 崇拝される「風と平和の神、ケツァルコアトル」の双子の神である。  最初の太陽の時。生贄を欲した「邪神、テスカトリポカ」から 太陽を奪回「ケツァルコアトル兄弟」は何度も「テスカトリポカ」や 「死神、ミクトラン」と戦い太陽や人類を守ってきた。 「ショロトル」は「死神、ミクトラン」が人類の肉体を復活させ 転生できぬようにするため、旧時代の骨を隠し持って事から 「ケツァルコアトル」と共に「ミクトラン」の罠をくぐり抜けて、 人類の骨を復活させる為に奪回した。  残念ながら、全ての骨を無事に冥府から持ち帰る事は出来ず、 これによって、人類には背格好や容姿に違いが出たと言われる。  あくまで神話の話である。だが、この続きがある。  神々は太陽の火を絶やさない為に、神自らが犠牲となって 新たな太陽を再生させていた。しかし、ショロトルの番に
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加