第1章

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本来は少し離れた都市国家の出身で、2、3年前に内乱に巻き込まれ 以降、学院に戻って院に進んだ。工学を専攻しており至って優秀で 多くの論文を権威ある世界的専門誌に、多数発表しており、 その全てにおいて必ず反論を討ち破っている。  個人的な興味から彼に「論文は好きな方か?」と訊いてみたところ 「1枚書くよりタイプライターを、分解修理する方が速いってだけ。」 少々、口調に若者らしいぞんざいさが目立つが、好感が持てる。 リクラッカ王国に対しても、この調査に対しても協力的である。  2、3質問をした。 「まずステファンス君への犯行グループによる、当日の扱いが少し違う。 君だけが中二階というのかな?屋根裏へ抜けるような通路を広く直して そこにテーブルを2つ程、置けるよう増築されている。  また、この屋根裏へ抜ける場所から、ハシゴ階段で一階にも降りられ 厨房の食材やら備品の倉庫として、役に立っているような造りだ。  でだ。肝心のマスターが、君の仕掛けを、当日まで知らなかった。 と証言している。中二階から屋根裏へは知っていたそうだが 厨房からも中二階、そして屋根裏へ行けることまでは 知らなかったそうだね。君は工学の為に難しい機械類を ”CATBAR”の倉庫を借りて、預けていた。 代わりに器用な君は”CATBAR”修繕も行っていて マスターからは、随分と信頼されていたようだね。」  何だこいつ?何が言いたい?手短に頼むぜ。 「そこで。ステファンス君に国家の威信にかけて是非とも 協力願いたい質問が3つあるのだが。構わないね?拒否権はないけれど。」 「構わないよ、答えたければだがな。」 「宜しい、まず1つめだが、少々思い出すのは酷かもしれんが 事件の当日、君だけが中二階で縛られていて、専属の見張りが付いていた。」 「ああ、間違ってない。」 「厨房に集められた人々から、この中二階では何が起きていたのか 確認されていない。が、唐突に中二階の手すりをぶち壊して落下し 一階ホールへ君が、転落した。しかも、そのあと主犯、ミクトランと 思われる人物に銃を突きつけられながらも、君に発砲はしていない。 さて、これは何故かな?彼は君に何か交渉でもしたか?」  そうきたか。 「その頭は眠ってんのか?考えるってことは、単に質問するよりも 少々面倒ってだけで、難しくも何ともないんだぜ?」
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