第1章

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 良くも悪くもお互い、もう慣れたのだ。宿命だ。  但し【オプ】と探偵業を始める前は、俺はボディビルの インストラクターをやっていた。これを人様に話すと かならず「ああ、やっぱり。」と言われる。やはり俺は 「ハードボデイビルダー」から「ハードボイルダー」を選び 間違っておらず、その頃はヒゲも伸ばしていなかった。  そして最大の違いは、まだ【オプ】に出会っていなかった。  あの茹だる様な残暑の夏。太陽は間違いなく俺を、いや人類を 焼き殺しにかかっていた。それすらいつか神話になる程にだ。  だがボディビルダーには3つの掟がある。  1つめは笑顔である。心から博愛を表現するのは心得の要だ。 思わず抱擁されたくなる、頼れる肉体美。そう美の化身である。  2つめは鍛錬である。白鳥は優雅に見えても、水面下では 必死に泳ぐ。その努力を他者に知られてはいけない。 (この事実は結構、皆知ってるのだが。)故に俺も水面下で プロテインを食いまくった。むせた。気管支に入っゲホ。  3つめが大事だ。爽快感だ。皆さんも野良ボディビルダーを 見かける事は、ちょいちょいあると思う。その時、是非とも よく観察してみて頂きたい。夏休みの絵日記のネタにもなるが、 実は「汗をかいてはいけない。」テカテカするのはあくまでも 柑橘系の香料アロマオイルであり、汗臭いなどは言語道断である。 ボディービルダーたるもの、フローラルであれ。格言である。  *この作品はフィクションであり、実在する云々が云々。*    だが幾ら日々、鍛え抜いて心頭滅却しても火は熱い。 だって焼く為の火が熱くなかったら、火の立場がないよね! 偶にはハードなトレーニングで、心が折れそうになる。 そんな俺を帰宅直後に優しく出迎えてくれるのが  愛すべき家族の【あんころ(♀猫11歳)】である。  彼女は、まだ仔猫だった頃に、引き取り手がいないかという 親類からの頼みで、我が家へやってきた。 受け取りに行ってから、初めて出逢った時。俺達は恋におちた。 ような気がする。俺は酒も好きだが、甘い物も大好きだ。 そして【あんころ】は白いお腹を包むように薄い灰色毛の背中で 包まれていて、最初は柏餅みたいだなと思った。  だが!よーく、注意してみた。部屋の光の加減のせいじゃない。 とおもう。気がする。思わせてくれ。灰色ではない!薄いほんのりの
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