第1章

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 昨日の【あんころ】巡回ルートを、まず見て回る。 ポストへチラシを入れておいた家の方が、壁に貼ってくれている。 感謝の気持ちで、近所の方へ聞き込みをすると 意外にも、我が家から数件先のお宅で、発見されていた。 かなり弱っていたらしい。何かエサがないかと家に戻られた間に 【あんころ】は居なくなっていたらしい。  それも昨日、俺が捜索し始めて間もない頃だというのだ。 つまり【あんころ】は家に戻ろうとしている。俺は離れて探してる。 ならば、家で待つのが一番早いのだろうか?  【あんころ】は人懐っこい。こうやって探してみて。 色んな人から愛されている。この白黒が見せたがっているのは そういう事なのだろうか。  どこまで行ったのだろう。どこまで愛されているのだろう。 どこかへ、行ってしまったのだろうか。まさか神様に。  ビシッ!いきなり強烈な、白黒のネコパンチを鼻めがけて食らった。 やるじゃねぇか。この野郎。俺様にケンカ売って博愛の心を捻じ伏せた 生意気な猫はテメエが最初だ。そのケンカ。  買ってやるぜ!ネコ好きでも、小指デコピンくらいは食らえ!  すごいダッシュで白黒は工事現場へ飛び出して行く。 「危ねえぞバカ!」工事現場の人は、自分が言われたと思って謝っていた。 すまないが、今はそれどころじゃねえ。二町過ぎ見失った。さすがに速え。  あのクソ猫!どこに逃げやがった。今度見つけたら只じゃおかね……。 塀の上で、毛づくろいなんかしてやがる。完全になめてやがる。イラッ。 あ、いや毛並みじゃなく、俺をだが。ソロリソロリ近づいて。 【あんころ】もこの技には引っ掛かったものなのだ。  素早く煮干を白黒の頭上スレスレに投げる。会心の投球!  かつて腕のたつ剣豪は、相手の姿を追わずカゲになる 次の動きたるべく、活路へ動くのを見切ったと聞いた。  俺は素早く、下半身を抱きかかえるように、 煮干の下辺りを狙ってジャンプした!必殺、見切りの舞!  白黒は、煮干にも俺にも興味なく、スルっと塀からおりて、 頭をかいてから、スタスタ歩き出した。完全にバカにされてる。 追いかけると、同じ速度で逃げる。ムカついてしょうがない。  そしてほとんど隣町へ来た時。公園で子供たちが輪になって 【あんころ】を囲んでいた。俺は大急ぎで駆け寄った。 弱弱しく衰えていながら、息がある。「にゃー。」か細くなく。
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