第1章

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 一人の女の子が俺を呼んだ。小学5年生くらいだろうか。 2年生くらいの女の子と、まだ年長さんくらいの女の子が居た。 *「貼り紙のネコちゃんだよね?」 「そう、そうです。」 *「お母さん帰って来るまで、逃げないように見てました。 お母さんに電話して貰おうって、皆で決めたので。」 「あ、ありがとう、ありがとうね。」 *「あたしは小倉華子です。公園の近くの角の家です。」 「”オグラ・カコ”さんですね。本当にありがとう。 今このネコ、すぐ病院へ連れていくので、後で 必ずご挨拶に伺いますので、お母様にお伝え下さい。」  そう言って俺は素早く名刺を渡して。 カコさんから、お家の電話を教えて頂いた。 頭を下げながらタクシーを拾おうと、公園を出ようとした。  滑り台の上で、白黒が寝てる。  もうすぐ陽が暮れる。  ありがとうな白黒。  病院ではなんでもないと言われた。点滴だけしてもらった。 自宅に戻って【あんころ】を奇麗に、拭いていると【あんころ】も ようやく落ち着いたようだった。近所の方、貼り紙をお願いした方に お礼を言ってまわると、やはり地図でみる限り、何度も 遠くと工事現場を往復していたようだ。  まだ終ってない。まだ終ってない。心細かったのだろうか。  翌日、小倉さんのお宅へご挨拶に伺った。小倉さんのお母様が 子供さん達から聴いた話を、教えて下さった。 こちらも病院で何も大事がない事を告げて、西瓜しか思いつかず、 お母様にお渡ししたら、カコちゃんが覗いてきたので、 「本当にありがとうね。」とアイスのピノアソート2種を渡した。 やけに評判がよかった。俺も甘いものは好きだ。ピノは美味い。  その後、探し猫の貼り紙を、発見報告の貼り紙へ お願いして回った。その時も驚くほど、 「ああ、見つかったんだねー。」「ネコさん、いたー!」 一部、お会い出来なかった方にお礼状を投函。  【あんころ】は驚くほど町中に愛されていた。  それから2年。【あんころ】はこの町の女王の如く旅立った。 そして俺は猫探しの探偵事務所を開業した。  仕事は少ない。報酬も少ない。だが偉そうな助手は有能だ。 白黒には【オプ】と名付けた。飼い猫じゃあない。相棒だ。  俺達はハードボイルドだからな。
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