第1章

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カーテンで仕切られた保健室のベッドの上。 ふわりとカーテンが揺れる気配を感じて、ほんの少し意識が目覚めかける。 ……先生……かな……。 そう思ったけれど、でもまだ瞼を開けることなんて出来なくて、 だんだんとまた、意識が途切れていく。 そんな風に、夢と現実の境目をうろうろしている時だった。 私の前髪に、ふわりと柔らかな何かが触れた。 ……今の……何? 考えつく暇もなく今度は睫毛に、こめかみに、首筋に、 柔らかなそれは、私に優しく触れていく。 ……蝶みたい。 何度も私に触れるその様は、ひらひらと舞いながら何度も花にとまる蝶の姿を連想させた。 ひらひらと舞っていた蝶が、今度は私の唇にふわりと舞い降りる。 蝶はくすぐるように触れたあと、私の唇を、ちゅ、と吸い上げた。 唇に触れた熱と、 甘く芳醇な香りに、 私の体が次第に熱を帯びていく。 ……私、キス……されてる……。 ぼんやりとした意識の中で唇と体に熱を感じながら、 私はまた、深い眠りの淵に吸い込まれていった。
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