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* * *
「……熱もないみたいだし、大丈夫だと思いますよ。
たぶん寝不足で、疲れが出たんじゃないかしら?
よく眠ってるみたいだから、もう少し寝かせてあげようと思うんですけど……」
「分かりました。それではお願いします。」
カラカラと保健室のドアが開けられ、またすぐにゆっくりと閉められて、
廊下を擦る、きゅっきゅっという靴音がだんだんと遠のいていく。
さっきの声、担任の先生だった……。
話し声で目が覚めた私は、ゆっくりと瞼を開けた。
ベッドに横たわったままの視界に映るのは、見慣れない白い天井と淡い水色のカーテン。
……そっか、私、保健室に居るんだ……。
取りあえず体を起こしてみるが、まだ頭がすっきりとしない。
――さっきの、
きっとあれは夢だったんだよね……。
蝶がキスするはずないもの。
――でも……。
唇に触れられた熱と身体の芯が痺れるような感覚がまだ残っていて。
ひらひらと舞いながら何度も私にキスを落とす蝶を思い浮かべながら、私はぼんやりとしたままベッドの上に座っていた。
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