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その晩、中々寝付けずに。 静まり返っている廊下に出て、テラスから庭を眺めた。 月明かりに照らされる庭園と、肌寒い位の空気に身を委ね、頭の中を空っぽにする。 と。 ーあ。 暗闇の中で動く物に、自然と目が止まり、それが、見知らぬ男だということに気付く。 番犬達が騒がないということは。 男の向かう先を目で追っていくと、静の部屋がある方へと進んで行っているのが見えた。 ー本当に、汚い女。 そして、愚かだ。 やっと落ち着いたムカつきが、再び始まる。 自分の夫がどれだけの権力を持っているのかわかっていないのだろうか。 そして、どれだけ恐ろしいのかということを。 父親は誰よりも、自分の持ち物に厳しい。 監視していない訳が無い。 父に対しての背信行為は、自分の猶予時間を縮めるのに十分な要素だ。 男への侮りが、静自身の首を絞めることになる。 ー眠れそうにないな。 小さく笑って、部屋に戻った。
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