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「お、、い…ちゃ」 歩けるようになると、部屋から抜け出すのが上手くなった葉月は、俺の部屋の前で力尽きて居ることがしばしばだった。 「葉月。また逃げたのか。怒られるぞ。」 俺を見ると、何がそんなに嬉しいのかと言う位、にっこりと笑った。 それを見る度に、笑顔っていうのは、本当はこんなもんなんだよ、と突きつけられて居る気がした。 ー俺もこんな時期があったんだろうか。 屈託無く笑う、太陽みたいなこんな頃が。 葉月をどうするべきか考えていると、きゃはははと遠くで、笑い声が起こった。 ー呑気に何やってんだろうな。 実はとっくの昔から、夫が自分に飽きて居ることに、気づいて居ないとでも言うのだろうか。 「お前とも、もう直ぐお別れかな?」 ぱっちりと開いた大きな目で、俺を不思議そうに見上げる葉月に問いかけて、そのふくふくした小さな身体を抱き上げた。
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