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いいかなと思ったんだけれど。
「これが卓球台?」
と学校の屋上に長いテーブルを二つ並べて、どっから持ってきたのか、ネットを張って即席の卓球台が完成していた。よく見てみると表面がでこぼこしているし、卓球台にしては不釣り合いな気がするけど、彼女はダンボールに入ったラケットを二つ、取り出して一つを私に渡し、ピンポン球をコンコンと即席の卓球台で跳ねさせる。本格的だな。
「これってけっこう本気な勝負?」
「そりゃー勝負するんだし、何かの罰ゲームがあったほうがいいと思うな」
「罰ゲーム? どんな?」
「ここは定番としては、勝ったほうは、負けたほうに命令できるとか」
「定番だね。けど、私はルール知らないけど」
「大丈夫、私も知らない」
ダメじゃん、なのになんで卓球しようなんて言い出したんだ。暇つぶしか? ルールも知らないのに、それとも罰ゲームがしたかっただけか。
素人同士の卓球はルールがちぐはぐになりかねないので、事前に取り決めておく。二回サーブで交代、打ち返すことができなければ一点、サーブを打てなくても一点、先に十点を先取したほうが勝ち。罰ゲームは勝者は敗者に命令ができる、定番と言えば定番のルールだ。屋上にコンコンとピンポン球が跳ねる。ラケットで打ち返すけれど、切り返しが早くてゆっくりしていられない、世界最速のスポーツだったけ? 確か卓球がそう呼ばれていたことを思い出す。まぁ、運動嫌いな私は卓球なんて今日だけだろうから、最速でもなんでもいいや。
「あのさー」
とサーブをしながら彼女が言った。手慣れている。
「なにー?」
やってきたピンポン球を打ち返しながら返事する。
「この前、学校の先輩に告白されたんだけれど、どうすればいいかな」
へいと打ち返してきた。気軽になんて言ってくれる、ゴスッとこけた。打ち返す寸前に言われたため、空振りしながら即席の卓球台に鼻から顔をぶつけた。痛い。痛い、痛いし、こいつはいきなり何を言い出すんだ。そして私はどうしてこんなに動揺してるんだ。いいことじゃないか、うん。ピンポン球を拾ってヘロヘロのサーブ。
「そりゃ、ここも寂しくなりそうだね。私、一人になっちゃうよ」
「まーねー、私もあんたを膝枕できなくなるのは寂しいかな、それとキスもでしないし」
「キッ、キス? え? ウソ!? そんなことしてたの?」
そりゃ膝枕はしてもらってたけどさ。
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