百合と卓球と膝枕

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彼女との出会いは、けっこう特殊というか、なんだか、こんな出会い方はありえないだろうというものだった。例えるなら転校生の男子と遅刻寸前の食パン咥えて走る女生徒が出会い頭にぶつかって、教室で再会するような、誰もが想像できるけれど、現実では絶対にありえないような出会い方だ。普通、そんなのありえねーしとか思っていたけれど、世の中はそういった気をてらう出会いがあるらしい。 屋上でうとうとして眠ってしまって、起きた時には女の子に膝枕されていましたという出会い、うん、なんじゃそりゃと思う。びっくりした。びっくりして顔を覗き込んでた彼女と額をぶつけ合わせてオーーとお互いに地面を転がって、サボリ常習犯の私達は屋上を待合い場所にして会うことが増えてた、どころか屋上、以外では他人のふりをするくらい。出会いが特殊だったせいか時々、膝枕はしてもらったけれど、どうして屋上にこだわってたかはわからない。 「キッ、キスしてたの? 私が寝てるときに?」 「うわー、純情だなぁーいいじゃん、君の寝顔は可愛かったし。ふつう、初対面つーか、寝ている相手に膝枕なんてしないでしょ?」 「否定してよ。なんで寝ているうちにファーストキスという女の子の夢が叶ってんだよ。まぁ、普通はしないけどさ」 つまりは覗き込んでいたというのは、私から見た解釈で、彼女は私にキスしようとしていたのだ。あんまり知りたくなかった。 「引いた? 女の子同士でキスするってやっぱり変なのかな」 「うーん、よくわからん」 いや、本当によくわからん。寝ているうちにキスされていたからというのもあるけれど、いやさ、私は恋愛にそれほど積極的なほうではないし、女の子同士の恋愛に対してもそれほど偏見を持っているわけじゃない、または、そういったことに無関心なだけかもしれない。フィクションの世界、虚構の世界だと捉えていた。 「そかそか、で、これで最後っ!!」 スマッシュだった。私のヘロンヘロンな返球を彼女は鋭いスマッシュで返球してきた。話に夢中で卓球はほとんど意識がそれていて結果として、私は負けた。 負ければ、罰ゲームだ。勝者は敗者に命じることができる罰ゲーム。で、この流れからいくと。 「私と、女の子同士だけれど、付き合ってくれない?」 という飾りもなにもないストレートな告白だった。返事に困る。いや、困ることなんてないだろう。断ればいいんだ。
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