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だからこそ、彼女は考える。自らに与えられた『責務』を果たすにはどうすればいいのかを。
(…………そっか)
御郷 樹は痛感していた。今までの自分が如何に腑抜けていたか。その『甘さ』こそが、目の前に広がる地獄絵図の結果だと。
ふと、視線を前に向けると────【魔王】によって放たれた第二波が樹へと迫っていた。
しかもそれは生易しい威力のエネルギー波ではなく、全てを消滅させる破滅の一撃。
エネルギー波の通った道筋には一切の残骸も人も生命も無かった。塵も残さぬ無情の一撃たる【魔王の咆哮】は全てを消滅させる。
樹はそれを眺めながら、ポツリと呟く。
(……私が“本気”を出せばいいのか?)
ぐっと、拳を固く握る。滞空状態のまま、彼女は体勢を地面に対して水平になるように変えてから『着地』の姿勢を取る。
ガゴッ!! と。右足が地面を捉えた瞬間、
────ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!
地面を抉(えぐ)るようにして突き刺した足をブレーキとして樹は衝撃を強引に殺していた。
土煙や瓦礫が舞い上がり、樹の姿をすっぽりと覆い尽くす。鼓膜を叩く轟音だけを響かせつつ、彼女は決死の覚悟で眼前の『驚異』に挑もうとしていたから。
暫くの間、それが続いただろうか────不意にピタリと音が止む。
直後、
「────はぁっ!!」
土煙を無理矢理に掻き消すように、超高速で前へと踏み出した御郷 樹がいた。
凄まじい胆力にただ脱帽するしかない。【魔王】の放った攻撃に耐えきったことにも驚きを隠せないが、それよりも更に驚愕するべきは彼女の『状態』である。
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