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──御郷 樹は小さく呟く。
「……はぁ、まさかここまで事態が深刻になるとは思わなかったよ。輪廻ちゃんもこの状況を“想定”して私と“彼”をここに転移させたのかも……」
一息。
「私と“彼”をこの場所へと分断させ、無理矢理闘わせて【覚醒】を促す────筋書きはこんなものかな?」
コロッセオ内で【御命 輪廻】(みこと りんね)が展開した黒い空間────。
「……いやはや、びっくりしたよねぇ? あんな大規模な次元の穴を抉じ開けたのに加え、私を含めた十五人を別々の場所へと転移させた……」
最初から【御命 輪廻】の思惑通りの展開へと誘導されていただけ。【神ノ欠片】の中でも厄介な存在たる樹を遥か遠くへと飛ばし、神の半身たる【神原 修二】と闘わせて『同士討ち』を狙う……。
「……ここで私達がいなくなれば輪廻ちゃんが『最強』ってことになるからね。私としてもそれはなんとか防がないと」
言ってから、樹は再び構える。
徒手空拳の気概で【魔王】へと挑むのは『普通』の【人間】。
ただし、彼女は少しばかり『特別』なだけ。
「──御郷 樹、推して参る」
【魔王】と【人間】の決戦が、今始まろうとしていた。
ここ──日本の首都たる【東京】で。
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