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────嫌な『夢』を見た。
大切な人達を裏切り、敵対する側となって傷つけていく酷い夢。
自分の意思を無視して行われる裏切りの数々。好意を抱いている相手がいるにも拘わらず、節操無しに次々と女性を口説く自分がいて────その度に耳元で囁く『声』があった。
“大丈夫、ボクに任せてよ。全部思い通りに事が進むから”
それは自分を惑わす悪魔の囁き。
微睡(まどろ)みの中で“僕”はズブリ、ズブリと沈んでいく。抜け出せぬ沼地の如く、手足が泥に絡み付いていたから。
“キミとボクは表裏一体。キミが『闇』ならボクは『光』。決して相容れないと思うかもしれないが、それは違う。
『光』と『闇』は何時だって側に寄り添って存在している”
自分の中の“もう一人”の自分が告げる。
まるで他人事のようにそれに耳を傾けていた自分に辟易するも、状況はそれを許さないらしかった。
“……そろそろ目覚めるよ。『ボク』は暫く静観するけど、これだけは覚えておいて──”
粘り気の強い泥から引っ張り出すようにして、自分の手を掴む感触。
自分と全く同じ顔の人物が真剣な表情で“僕”に言い放っていた。
“キミの身体はもう一人だけのモノではないのだから”
直後、自分を照らす光と共に“僕”は現世へと意識を戻していた。
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