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神官が棺の側に立つと、棺の中に眠っていたファラオの声が民子の頭に響いてくる
「我はもう疲れた。 生き返りたいとは思わない。
何故兄弟で争わなくてはならぬ。我が滅することで弟がこの世を平和に治めてくれるのであれば、もう我をこのままにしてくれ。」
「でも、王妃様はなんて仰いますでしょうか。
ファラオが亡くなり生き返らないと知ったときお嘆きになると思います」
「いや、もうこのままで。
それより、我が生き返るのを拒んだことを知ったら……十分注意してくれ。面倒なことを頼んで済まない、カミュネ神官」
そして、いつものシーンが繰り広げられる
「何故、ファラオの命を呼び戻すことが出来ぬのじゃ!何のための神官か!お前などいてもいなくても変わらない!この役立たず!この目障りな奴を、さっさとどこかへ連れて行け!」
王妃は一人その場に残り、ファラオに縋り付き泣き出した
「なぜ、貴方は戻ってこないのですか。
私では貴方の役に立てなかったのですか。私では貴方の心を癒すことができなかったのでしょうか
死んでもなお、貴方の声が聞ける神官が妬ましかった。
私も貴方の心が知りたかった、声を聞きたかった。
貴方の心をカミュネ神官から聞かされたとき、もう、冷静ではいられなかった……
こんな私を憎みますか?」
――――
朝を迎えた民子の目には、涙が溜まっていた。カミュネ神官をナイフで刺したのは私なんだ。
拓也は王だった。私はカミュネ神官である美加を刺し、輪廻転生でこの世に3人が集まり、そして、その時代の業として出逢ってしまった。
王はカミュネに対し、申し訳ないと思っているのだろう。
たとえ死者とはいえ、シャーマンであるカミュネ神官に我が想いをぶつけ、その結果神官は息絶えた。
刺されたカミュネは当然、私のことを恐怖に想い真に仲良くはなれないだろう。
王の気持ちに触れることの出来るシャーマンの生まれ変わりならば、私よりもきっと拓也のことを分かっているはず……
拓也が美加と過ごす時間の中で少しでも優しくしてくれたら
まだ、私は拓也を見つめ続けることは出来る。
拓也のこと嫌いじゃない、嫌いじゃないから、逆に拓也の美加に対する行動も許せてしまう。
でも、辛い……
拓也の元から巣立てば楽になるのかな……
どうしたらいいんだろう――
今日も心に冷たい雨が降り注ぐ
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