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「民子、凄い汗だな。またあの夢見たのか」
「うん。今日もまた女性が神官を刺したの。
白い衣服に血がにじみ出して、私それを遠目で見てるんだけど、夢を見ている感じがしない。変な感じ。
あ!拓也、今すぐご飯作るね」
最近一緒に暮らし始めた彼、石川拓也。
人望も厚く、柔道部の主将をしてる大学4年生。
私、木村民子。
アロマテラピー同好会で一緒の加藤美加に、拓也を紹介してもらった。
拓也を初めて見たとき、熊みたい!って、思ったのは内緒の話。
白いお皿に、焼いたハムと目玉焼き。レタスにオニオンスライスを彩りよく盛りつける。
「ねぇ、拓也、知ってる?香りの起源は古代エジプトなんですって。
薫香として香木をたいて、悪魔払いに使ったり、病気を治したり、男女の営みにも使ったそうよ。イランイランの香りには催淫効果があるし」
「イランイランねぇ……民子、今度それ試してみるか?」
ニヤリと笑いながら拓也が告げるので、
聞かなかったことにして、こんがり焼いたパンを口いっぱいに頬張った。
「悪いな、付き合わせて」
朝練のある拓也に付き合って、少し早めに私も家を出る。
「気にしなくて良いよ。
実は今ね、水蒸気蒸留法について調べてるの」
「水蒸気蒸留法?」
「うん。ベランダでラベンダーとカモミール育ててるの知ってる?その水蒸気蒸留法を使えば、ラベンダーやカモミールから、アロマオイルが作れるの。
この前ネットで調べたら詳しく書かれた本が見つかったの。図書室で今日もその本、閲覧してくる!」
「何か、民子楽しそうだな。
なあ、それで水蒸気蒸留法とやらで、イランイランのアロマオイルは作れるのか?」
ニマニマしながら朝の話をまた振ってきた。
「水蒸気蒸留法でも作れるけど、その前に、イランイランを家庭で栽培することの方が難しいよ」
「そうなのか……
イランイランが簡単に作れればまた一段と楽しく過ごせるんだけどな」
腕を組みながら真剣に語る拓也の姿に思わず笑ってしまった
「もう、拓也ったら。その話しは終わりだからね」
はにかみ笑顔で拓也に告げると、ガッカリしたのか残念そうな顔しながら笑ってた。
そんな顔を見たら、またなんだかおかしくなってしまった。
拓也は、本当に優しい人。怒るときは厳しいけど優しいときは本当に優しい。だから、好き。
彼のためなら、何だってしたいと思う。
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