業(カルマ)

3/10
前へ
/10ページ
次へ
大学へ着き、拓也と別れた私は、図書室へと向かった。目当ての本を見つけ、読みふける。 「50gのラベンダーから、2mlのアロマオイルが作れるのね」 日の光を浴びながら、一人ブツブツ口にする。 「おはよー」 バラの香りが微かに香ったと思ったら、同じサークルの美加だった。 かのクレオパトラが愛した香りは薔薇。それを知ってから美加もその香りを愛用している。 「おはよう。今日は早いのね。」 「ちょっと読みたい本があって、少し早めに来たの。 それより、見かけたわよ。朝から二人仲良く登校してたの」 「やだ、美加見てたの?!声かけてくれたら良かったのに」 「そうも思ったのだけどね、‘イランイランがどうちゃら’って聞こえてきたからやめちゃった」 美加が何か言いたげな様子で、ニヤニヤしながらこっちを見る 「もう!美加まで」 拓也とそういうことがないわけじゃない。 でも、やっぱりそういう話題は少し恥ずかしくて、何となく赤くなってしまう。 「イランイラン、良いと思うけどね-。あれって、媚薬でしょ?」 「うん。 拓也もどういう風なのか興味があるみたい。 だから、今度イランイランのアロマを焚こうって……」 「拓也さんったら、そうなんだ。」 美加はそう言って寂しげに笑う。 「そういえば、美加はその後、彼とどうなの?」 社会人の彼がいる美加は、最近なかなか逢えないことを寂しがっている。 「うん、まぁね…… ねぇ、それより民子、今度サークルで水蒸気蒸留装置作るって」 「そうなの!? 今ね、それに関する本を読んでいたところなの。家でもアロマオイル作れないかな、って思っていって。うわぁ!嬉しい!」 「‘これで、イランイランのアロマオイル作れる!’って民子が喜んでたこと、拓也さんに告げ口しちゃおう!」 「みーかー、その告げ口はナシだからね。 っていうか、わたし、イランイラン作るなんて一言も言ってないし」 「うそうそ、民子ウソだよ。機嫌直してー。ね?!お願い」 ここが図書館だと言うことを忘れ、二人して笑い声を上げてしまったら近くで勉強していた子が、こちらを見て睨んでる。 「「ごめんなさい」」 そうして、美加と私は図書室を後にした。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加