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週末金曜日。
食事も終わり、拓也とまったりしていた。
「なぁ、民子。日曜日にこれ見に行かないか?」
「なになに?」
拓也が差し出す紙切れを手にとって見る。
色鮮やかな黄金のマスクがこちらをじっと見つめている広告だった
「あ!古代エジプト展!」
「夢でよく見るのは、きっとこれと何かに関係するんじゃないのか?行ったら何か分かるんじゃないかと思う。
行ってみないか?」
「たくやー、私のためにわざわざありがとう。すごく嬉しい」
そう言って、拓也の腕にギュッと抱きついた。
――
そして、日曜日
拓也と一緒に行った古代エジプト展。
レリーフや、パピルスに書かれた文字など色々目にしていたら、急に胸が締め付けられるように苦しくなった。
「た、たくや……、ごめん、あっちで休んでるね」
拓也が心配そうにこちらを見つめ、無理なら帰るか?と言ってくれたけどせっかく来たし、なかなか見ることの出来ないものばかりだから、拓也はゆっくり見ていて、と断った。
だけど、何でこんなにも胸が締め付けられるくらい苦しくて、そして、愛しくて、そして、悲しいんだろう。
私の心は何を叫んでいるのだろう。
入り口近くの休憩スペースに腰掛けて拓也を待っていた。
石台の上に横たわっているミイラを見た瞬間に涙が溢れてきて、胸が締め付けられた。
パピルスに書かれたヒエログリフ。
古代文字なんて読めないはずなのに言葉がそのまま降りてくるようだった。
パンフレットを握りしめ、じっと考えていた。
「民子、民子……」
優しく呼ぶ拓也の声に気がついたのは、窓の外に真っ赤な夕日が見える時刻だった。
「拓也、ごめんね。」
「いいよ。それよりゆっくり休めた?」
「うん。もう大丈夫」
そして、その晩もまた、いつもの夢を見て、いつもと同じ場所で目が覚めた。
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