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ある日の午後、駅前のコーヒーショップに拓也と美加が二人でいるのを見かけた。
今朝、拓也から美加と会うと言う話は聞いていた。彼のことで悩んでるから、その相談ということも拓也の口から教えてもらっていた。
でも、拓也に話しかける美加は、無邪気で嬉しそうに髪の毛を手で弄ぶように話をしている。
美加が拓也を見つめる目が、愛しい人を見つめる‘女’の目をしているのが嫌だった。
拓也を信じてる。拓也の彼女は私、それは分かっているけど、でもなんだか嫌だ。
親密に話す二人の姿を見て、なんだか心が辛くなってきた。
本屋へ行き、アロマに関する本を選んでいるときも美加の拓也を見つめるあの顔が忘れられなかった。
家に着き、アロマポットにオイルを垂らす。
心を落ち着かせるために、選んだ香りはラベンダー。
BGMにクラッシックを、コーヒーカップにホットミルクを注ぐ。
ボーッとしながら、ホットミルクに口を付けると電話が鳴った。
「あ、拓也どうしたの?」
「あのな、美加ちゃんなんだけど
実家から、食べきれないほどの食材が送られてきたんだと。
いつも世話になってるから、二人にごちそうしたいって。
今晩、うちで食べよう。いいだろ?」
「うん。それは別に構わないけど、美加の手料理ってことだよね?」
「そうだな、そういうことになるな」
「わかった、了解」
本当は拓也に美加の手料理を食べさせるのが嫌だった。
こう思うのは私の我が儘?
でも、美加の拓也に対するあの態度を見てしまうとどうしても余計なことを考えてしまう。
拓也、大丈夫だよね?
貴方はどこにも行かないよね?
飲みかけだったホットミルクを一気に飲み干した。
夕方、大きな荷物を持って美加が拓也と一緒にやってきた。
「おい、民子。美加ちゃんの荷物受け取ってくれ」
「了解。美加、キッチンに荷物運ぶから、それちょうだい」
「ありがとう、民子。今日は美味しいの作るね!」
「うん。楽しみにしてる」
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