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美加が作ってくれたのは、ビーフストロガノフに野菜サラダ。そして、ビシソワーズ。
「美加ちゃん、料理上手だな。このビシソワーズなんて最高。
民子もこれぐらい上手だったらな」
拓也の何気ない一言に少しだけ胸がギュッと苦しくなった。
分かってる、本心から告げてないことぐらい分かってる。
でも、やっぱり聞きたくなかった。
「拓也さん、ありがとう。お口にあってよかった」
美加と二人で流しに立ち、食器を洗っていたら美加が自分の腰をポンポンと拳で叩く。
「なに、美加ちゃん腰痛いの?」
「私、昔から腰痛持ちで……」
「そうなんだ、俺マッサージ得意だからやってやろうか。
後輩たちにもやってるんだが、結構評判もいいぞ」
「え?!う、うん。じゃぁ、お願いしようかな」
美加はこちらを気にすることなく、拓也に返答をしている。
その声色は本当に嬉しそう。
私も良く拓也にやってもらうけど、本当に気持ちがよい。
でも、拓也が美加のマッサージをすること、ちょっと複雑。
恋愛感情が無いのはわかってる、でも、必要以上に美加に優しくしないで。
拓也が美加の腰をマッサージしていたとき私はだまってじっとバラエティ番組を見ていた。
画面の中でお笑い芸人さんが、共演者を笑わせていたけど、一つもおもしろくない。
ボーッとテレビを見ている私の心に冷たい雨が降っていた。
美加が帰ってから、拓也に言った。
「お願い、必要以上に美加に優しくしないで。
お願いだから、もう二人だけで逢うのは止めて」
「は?何言ってるんだ、民子。お前少しおかしいんじゃないか」
拓也はケラケラ笑いながら風呂場へと消えていった。
美加に嫉妬する私の方がおかしいのかな
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