桃色の雪が降る夜に

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「で?今夜もやる事だけやって帰って来たんだ」 小夜子が缶ビールを片手に持ち、ククッと意地悪気に喉を鳴らした。 「そんな言い方しないで。虚しくなるじゃん…」 私はベッドに転がって大きなため息を落とした。 「虚しくなるなら別れりゃいいじゃん」 「それができたらとっくにしてる」 「だよね~。桃花は恋に恋する乙女ちゃんだから。24にもなって、いつまで恋愛ごっこしてるつもり?」 小夜子はベッドに凭れたまま私の顔を覗き込み、プクッと膨らませた私の頬を摘まんでニヤリと笑った。 彼女は高校時代からの親友。 社会人となった今でもこうしてお互いの部屋に通い合い、ビール片手に飽きもせず、ガールズトークで盛り上がるのが私たちの日常。 誰もが振り返るような美貌には似つかわしくない、小夜子の大胆で毒気を帯びた言葉には時々へこむ事もあるけれど。 彼女の飾らない、男にも勝るサバサバした性格が好きで。優柔不断で頼りない私は、彼女と一緒にいると何とも居心地が良くて安心する。 「24にもなってって、小夜子だって特定の彼氏作らずにいつまでもフラフラと。そろそろ真剣に誰かと付き合いなよ!」 私の頬を摘まむ小夜子の手を払い除け、私なりの反撃。 「え~ヤダ。めんどいから」 「めんどいって…人を好きになるのがどうして面倒なの?」 「…そんな、哀れんだ目で見ないでよ。ただ…どんな男と寝ても気持ちが高揚しないだけ」 「高揚って…」 「満たされないの…何もかもが」 ……満たされない……何もかもが…… 悄然とした顔つきで呟いた親友の言葉が、私の心を貫いた。
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