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カツカツと小気味の良い革靴の音を鳴らし、近づいて来たのは三白眼の大男だ。 「…遅ぇよ。」 目に巻かれていた包帯が緩み、軽く睨んでいる聖月を見て裕司は鼻で笑った。 「依頼じゃなきゃ誰がお前みたいな生意気な餓鬼助けるかよ。」 「…。」 「助けてもらえるだけ有難く思えや『お姫様』よぉ。」 裕司は基之と茂雄に聖月から離れるように指示をだす。 それに従い二人はゆっくり聖月から離れる。 「裕司!」 後ろから仁も追いついてきた。 治利は先に屋上のヘリポートに向かわせ、保護してもらったようだ。 「…あらら、随分やられちゃったな。」 床に伏せてる聖月を見た仁は近付き、抱き抱えた。 「汚い手で聖月に触…ヴぁ!!」 仁が聖月を抱き上げた瞬間、嫉妬丸出しの茂雄が声を荒げたが裕司に右肩を撃ち抜かれた事により、怒声が呻き声へと変わる。 「勝手に喋んなホモ野郎。」 「…ヴぅ…。」 聖月を保護したのだ。 この二人を生かしておく必要はない。 そう思った矢先だ。 「裕司!」 「チィ!!」 先程聖月に蹴り上げられた武装兵が銃を構えようとした時だ。 そっちに目が行き、間一髪撃たれるのを阻止したが、坂平親子から目を離してしまった。 視界を戻した時には坂平親子はそこには居なく、走って非常階段へと向かっていた。 しかもモニタールームから残りの武装兵が 現れる始末だ。 「仁!餓鬼の紐解いてやれ!!」 裕司の一言に仁は聖月の拘束をドスで解いた。 手が自由になった瞬間、聖月は仁の懐にあるハンドガンを抜き取り、モニタールームから現れた武装兵を撃ち抜いていく。
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