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他にも調べたらもう足首に小型ナイフが一本、太腿にまさかのポケットコルト。ワンタッチ式のベルトを外せばすぐさま下に落ちる仕組みになっているようだ。 もう言葉が見つからない。 「はぁ~。」 本日三度目の溜息の裕司。 頭が痛くなりそうだと歪ませた眉の間に指を入れ込む。 「…で、裕司に向かって灰皿を投げてナイフで襲って来たわけね。」 「そう。」 事情説明している仁にそれに納得した治利はチラッと縛られている聖月に目をやった。 正確には聖月の足を見た。 「よくそんな足で動けたな。」 先程暴れた所為で傷口が開き包帯が血で滲んでいた。 また包帯を用意するべきなのだろうが果たしてこの猛獣が大人しく巻かせてくれるだろうか。 「それにしても裕司。なんでこいつの名前知ってたんだ?」 「あ?依頼の時にこいつの資料ももらってたんだよ。」 資料を纏めた棚の引き出しから裕司は《春日生物学研究所》と書かれたファイルを取り出し仁に渡した。 春日町生物学研究所 生物兵器研究 被験者001《長元 聖月》 M-13ウィルス抗体(+) Vn抗体(+) プリントには上記に書かれた文と黒髪、黒眼の聖月の写真が映されていた。 「その髪色と目、研究での後遺症か?」 「………。」 裕司は話を続けた。 2年前に起きた春日町での事件。 場所は違うが、その日同時に5人の学生が遺体となって発見された。 1人は自殺と断定したが残り4人は普通ではあり得ない死に方をしていると報道された。 ニュースでは知らされていない新聞では、ある2人の兄弟は銃弾の後があり銃殺と見なされているが身体には何かに噛み食われた後があり歯型を調べると人間のものだったらしい。 そして同級生だった男女の学生は自分達の母校の保健室で原型をとどめていないほどの焼死体となって発見された。 「その中で1人行方不明になっていたのが長元 聖月。お前だろ?」 あの頃ニュースでかなり取り上げられていたが二年前に新聞で映っていた顔写真を思い出した裕司の記憶力もなかなかなものだ。
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