第1章

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 とある街道沿いに老婆と若く美しい娘が二人で住んでいた。 時に雨に降られ、又、時には星も見えぬ闇夜に包まれて 宿場町へ辿り着けない者が、その一夜の平和な睡眠を願って 姥と娘の家に、一夜の宿を願う事が度々あった。  旅人に魚心あれば水心というばかりではない。 氷水をバケツで被ろうとも、被らなくとも 下心は仏心になることなどはない。 見た目で全てを判断するなど、身勝手の一つであると謂われる。  そうして、哀れな旅人が鬼婆たる姥に八つ裂きにされ、 マイナスドライバーで串刺しになったように、見るに耐えない 無残な骸になり身ぐるみ剥がされて、家の横の池へ沈められる。  これは業の故なるか。  とある日。姥の行いを咎める事、言葉では適わず。 ある旅人が連れた、乳飲み子の床に入れ替わって 娘が自ら、姥の惨殺の犠牲になる。  深夜に乳飲み子と共に、娘の手引きで脱出した親は その後をしらぬ。  姥は可哀想な娘を抱いて、家の横の池に身を沈めたという。 これは東京の浅草、花川戸公園に碑がある。  水に鎮め戸を〆て、花ありける事なり。 道々、気をつけなされ。
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