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かといって、閉めておくと中はサウナどころの騒ぎじゃない。
それでも、ご主人の表情は嬉しそうだ。
去年変えてくれた、新しい黒いレザーのシートにぽたぽたと汗がしたたり落ちていた。
そして、カシャっという音と共にカセットテープが入れ込まれる。
でもただのカセットじゃない。
テープ本体からはコードが伸びており、ご主人が愛用する”うぉーくまん”とやらに接続されているのだ。
そして、間髪入れずに軽快なポップな音楽が流れ出してきた。
後部座席の奥に仕込まれているスピーカーがズンズンと車体を振るわせる。
いつのまにかご主人も気分が乗ってきたのか、開いている左手で指を鳴らしていた。
ご機嫌に、半分木製が使われているハンドルを回す。
この暑い中、ご丁寧に革製の手袋まで付けているのだから相当なものだ。
音楽のテンポに合わせて、軽快にシフトが上がっていく。
僕の心臓もうなりをあげて、全身にパワーがみなぎっていく。
手足のラバーも地面の熱のおかげでだいぶ柔らかく緩んでいる。
おかげで、地面がつかみやすいのなんの。
ご機嫌に風を体全体で切っていく。
そうだ。
今日はどこへ連れて行ってくれるんだろうか?
僕はまだまだ走れる。
どこまででも、自由に走って行けるんだ……
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