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いつからだろうか?
ぼんやりと考えるようになったのは……
今日も今日で、いつもと同じようにご主人がやってくる。
チャラチャラと機嫌が良さそうにキーをもてあそびながら悠然と歩み寄ってくる。
暑い日々が続いている。
こういう日はあまり調子がよろしくない。
それはご主人もよくご存じのこと、慣れた手つきで僕の心臓部を開けていく。
いつもながら、体の芯まで覗かれるというのは少し恥ずかしい。
永い永い年月が経ち、どこもかしこも汚れきった、汚い汚い体なのだ。
赤さびが所々でており、もう腐食は止まらない。
こんな僕をいつまでも乗ってくれるご主人が大好きだった。
とはいえ、さすがに熱せられ続けた我が体。
その温度も目玉焼きが焼けるのではないかというほどになっている。
一瞬、ご主人の体が飛び上がった。
ご主人は若干、あわてんぼうなのだ。
それでも、慣れた手つきでこちらの中をいじっていく。
しばらくして、
”あぁ、やっぱり”
声が上がった。
案の定ということなのだろう。
自分の体のことだから、何が不足しているのかちゃんと分かっている。
だから、液がなくなるのは分かっている。
ちなみにいうと、あと私の命でもあるオイルの漏れがそろそろまずい。
喉がからからで動きが悪い……
早く……早く気付いてほしい。
シーリングが劣化してきているのだ。
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