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「ミストポイズン? 何やの?それ」
《研究所》の奥、《悪魔の墓所》と呼ばれる小部屋に向かいながら刹那が首をかしげる。烱や刹那は“盗って来る”専門の実動員なので、それぞれの《悪魔》の特性にはうとい。
「ミストポイズンというのはな。人をわずかな量で瞬時に殺すことが出来る毒ガスに付けられた名前だよ」
刹那の半歩先を歩く所長が説明を始めた。
「この毒の一番恐ろしい所はな、何と人体に入ってから10秒で完全に分解してしまうところだ。故に“ミスト”という名前が付けられたとのことらしいぞ。致死量もごくわずかで、これを世に出してしまうと、大量虐殺がお手軽に出来てしまうことになるかも知れん」
「うっわ~。大変や~。そんなものまであるなんてさっすが《悪魔》」
大真面目に語る所長に大騒ぎで反応する刹那。二人の後ろを歩いていた烱は表面上、無関心を装っていたが、その実、反応が出遅れたことを密かに拳を握ることで悔しがっていたりした。
《悪魔の墓所》というネーミングは、その部屋に《悪魔の方程式》の台座があることに由来している。大戦中の混乱に乗じてこの研究所が入手したこの台座には、びっしりと解読不明の古代文字が書かれている。
「31はここやね。烱、早く早く」
「おう」
宝石がはめ込まれるよう、いくつもの穴が開いている台座は一見、ただの円柱だ。しかし、内部には《研究所》のスタッフによりコンピューターが内蔵され、ケーブルによって解析コンピューターへと《悪魔》の暗号データを送れるようになっている。
天瀬博士。解析準備、整いました」
モニターの前で解析が始まるのを見届けて、刹那達は部屋を出た。
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